水素は生命の源です。

水素原子はもっとも単純な原子です。そして原子組成では身体の〇〇%が水素原子です。多くの水素原子は身体を構成する水(H2O)に含まれています。これがまずは水素原子の大きな役割です。そしてその次に重要水素の役割があります。身体を構成している様々な分子にはほとんど水素原子が付いています。たとえば、栄養分と言われている糖のうちで最もシンプルな糖ブドウ糖はC6H12O6ですから、12個ある原子のうち半分が水素原子です。炭水化物は名前の通り炭素(C)と水素(H)酸素(O)からできています。なぜこのように水素原子が生物にとって重要かといえば、水素はエネルギーの源である電子を蓄積するエネルギー担体だからです。水素ガスを燃料とする燃料電池も、なぜ水素かといえば、エネルギーの源である電子は単独だとまさにエネルギーの塊で不安定なので、蓄電池にはどうしても爆発の危険があります。他方、水素の場合、電子は水素の原子核の周りをまわって安定させることができるからです。電気自動車と燃料電池自動車の違いは、エネルギーの源である電子を直接蓄電池で貯めるか、電子を安定保持できるエネルギー担体である水素原子=陽子を貯めるかの違いです。
生物は数十億年以上前からエネルギーの源の電子を水素を使って蓄積してきています。これが水素が生物にとっていかに重要かの理由です。化学でいえば、電子をリッチにしてエネルギーの高い状態に分子を変えることが還元作用で、その電子リッチな分子を燃料としてエネルギーを使う作用が酸化作用です。こちらは酸素を分子に結び付けます。だから、単純には水素を付け加えることがエネルギーを蓄積することで、水素を失うこと、あるいは酸素が付加されることがエネルギーを消費することです。

水素原子は陽子1個からできています。その陽子の周辺に1個の電子が存在しているのが水素原子です。この電子が陽子の周りでどのように存在しているかというのは、そう簡単なテーマではありません。通常は球体の電子の粒が 中心の陽子の周りをくるくる回っている原子模型で説明されています。しかし、電子は粒にもなれば波にもなる量子です。量子力学が波動方程式で表現している謎多き実体が電子なのです。そしてこの謎多き量子から出来上がっているのが私たちの体です。サイコロを1個転がすだけだと、どの目がでるのか予想がつきませんが、100個や1000個といった大量のサイコロを転がすと、1の目がでるのはその六分の1個であると、ほぼ予想できます。1個1個だとコントロールできない原子も多くの数が集まると、動きが予想でき、システムに組み込むことができます。この統計学的大数のおかげで、我々の日常が安定しているという面があります。
とりあえずは、水素原子は1個の陽子と1個の電子でできているという原子模型にそって話をすすめます。
この水素原子は単独では不安定なので、別の原子や分子と結合します。水素原子どうしが2つ結び付くと、水素分子(H2)ができます。これは安定した分子で、水素ガスと呼ばれます。
この安定した水素分子を水に入れたものが一般的な水素水です。この水素分子が同じ性質を持つ水素原子が共有結合で結び付いているので、分子には電気的な偏り=極性がありません。このため、極性をもっている水分子の集合である水にはほんのわずかしか溶けることができません。わずかに溶け込んだ水素も大気圧環境では水素ガスとなって水から離脱します。
水素ガスが水に溶けている間は水は酸化還元電位が下がります。電子リッチな水環境になっていることから、水溶液中では還元的反応が進みやすくなると推測されます。この還元電位が下がった状態の水により、酸性にかたよっていたために起こっていた生化学反応の停滞が解消され、より本来の健康的状態になっていくことが大きな意味では水素水の働きといえます。坑酸化力がある水として水素水が健康に良いとされる理由の一つです。また、水素ガスは、ヒドロキシラジカルという強力な酸化作用をもつ物質を還元することが可能であるとの知見も得られています。しかしこれはヒドロキシラジカルの強力な酸化力によるものです。ヒドロキシラジカルは強力な反応性があるので、ほとんどの生体分子に悪影響をあたえるのと同様に、還元能力の乏しい水素ガス分子とも反応できるということです。
このような細胞に含まれている様々な生体分子を破壊して「サビ」させる悪質な分子に対しては水素ガスも有効ではありますが、細胞内での生体分子の働きに対して有効なエネルギーを与えるためには水素ガスはイオン化して水溶液中の酸化還元反応に参加する必要があります。したがって、水素が体内で重要な役割を果たすためには水素がイオン化して働くことが必須です。

21世紀はマイナス水素イオンが注目

水素がイオン化  ヒドロゲナーゼの活性中心はヒドリドイオン

 水素が水の中でイオン化するためには生体内ではヒドロゲナーゼという水素を分解する酵素が必要です。体内に入った水素分子もこのヒドロゲナーゼと共存すると、有望なエネルギー源となることができます。水素ガスを含んだ水素水が健康によいとされる理由の一つには腸内細菌を含むこの体内でのヒドロゲナーゼとの出会いの可能性があるからです。

このヒドロゲナーゼについては20世紀になってやっとその働きが化学的に再現できるようになりました。九州大学の小江教授らの研究成果です。人工的にヒドロゲナーゼが作れるようになってヒドロゲナーゼによって水素分子がマイナス水素イオンとプラス水素イオンにわかれることが確認されました。(図1)

この研究成果でマイナス水素イオン(=ヒドリド)が生化学反応において確実に存在することが証明された画期的な研究です。

水素のチカラ


カルシウムとヒドリド

もうひとつのヒドリドが注目されることになった画期的研究は東京工業大学の細野秀雄教授グループのマイエナイトと呼ばれる物質の研究です。

マイエナイト(12CaO・7Al2O3)の基本成分はセメントの材料と同じです。このカゴ状構造の中に通常はO2-が入っていて、緑色の結晶になっています。これを水素還元焼成処理するとカゴの中のO2-ががH-に置換され、透明結晶になります。これに一度紫外線を照射すると電導体になります。この性質を利用して透明電極の開発が進みました。カルシウムを含むカゴ状化合物にヒドリドが付くと、これまでとは違った特異な性質をもつ物質ができるという極めてインパクトのある研究結果です。

水素のチカラ


水素のチカラ


 このマイエナイトの特性を利用する研究の中で注目すべきなのが、窒素固定酵素についての研究です。
生物は空気中の窒素を利用してアンモニアを合成しています。この機能がなければ、生物は生きていけないほどの重要な反応です。生物を構成するたんぱく質を合成するにはN2窒素分子という極めて安定した物質を分解して反応性の高い窒素をつくださなければなりません。この窒素からアンモニアを比較的低温で合成できる触媒(=酵素)がマイエナイト研究からうまれました。(図3)
これは生物の行う窒素固定にもヒドリドが重要な役割を果たしている可能性を強く示唆するものです。

水素のチカラ


また、生物にとって極めて重要な物質である骨についてもヒドリドとの関連で注目すべき発見がありました。
骨はコラーゲンというたんぱく質とハイドロキシアパタイト(水素化リン酸カルシウム)からできています。骨(ハイドロキシアパタイト)は図のような6角形の分子構造をもっていて、カルシウム リン酸 酸素 水素 から成っています。老化の原因の一つにはこの骨格がドンドンスカスカになって骨がもろくなることです。特に女性は40歳を過ぎるとドンドン骨細胞が減ってしまいます。
 2014年にこの骨の主成分であるハイドロアパタイトがマイナス水素イオンを蓄えることができることがわかりました(2014年 東京工業大学 林・細野グループによる日本セラミックス協会大27回秋季シンポジウム)。骨の六角形構造のなかの六角形配置になっているカルシウムの真ん中には通常では水酸基(OH)が入っています。この水酸基を水素原子に変えると、カルシウムの中に入っている水素原子はマイナス水素イオンになっていることが核磁気共鳴法(NMR)により証明できました。これも生物学からみても画期的な研究成果です。物理学の世界では単に一つのありふれた化合物にマイナス水素イオンが保持されるという発見ですが、骨は生物にとってきわめて重要な物質です。2015年に第1回日本骨免疫学を主催した日本骨免疫学会(事務局:東京大学大学院医学系研究科内)のホームページでは骨の重要性を「骨構成細胞は造血幹細胞をはじめとする骨髄内の免疫細胞の支持細胞としても注目を集めています。(HPアドレス添付)」と記述されています。骨は血液細胞と免疫細胞を作り出す場所です。ここにヒドリドが蓄積できるということはヒドリドが生命活動に果たしている可能性を示唆するテーマで、今後の研究が期待されます。

水素のチカラ


水素のチカラ


水素は生命のスタートから重要な役割をもっています。特にも還元性をもった水素は生命活動の根幹と言ってもいい重要物質です。これについて現代の物理的知見をもとにコンピューターシステムとの関係でその重要性を比較すると以下の仮説が可能です。

コンピューターの本体ハードウエアに相当する生命システムは骨格です。カルシウムが重要な役割をはたして、生命をささえています。ここではヒドリドは骨をつくったり骨に蓄積されたりしている可能性があります。物理ではカルシウムアパタイトにヒドリドが存在・蓄積されることが証明されました。
OSは体を動かすエネルギー供給システムで、炭素が重要な役割を果たしています。物理ではセメント原料にヒドリドが加わると透明電極になって、透明でありつつ導電性を持つという発見が重要なきっかけになりました。以前から生物のエネルギー生産の中枢であるNADからNADHへの還元は2電子還元としてヒドリドが重要な役割をはたしていることが定説となっています。
パソコンの機能・アプリケーション・ソフトに対応するのはタンパク質・酵素・ビタミンなどの具体的な働きをする高分子を作る働きが対応し、これは窒素が重要な役割を果たしています。これについはマイエナイトのカゴ構造にヒドリドをいれて窒素からアンモニア(タンパク質の原料)を作ることができたことで証明されました。いずれも重要な働きにはすべてヒドリドが関与している可能性が見えてきました。そうなると、結局生命とはマイナス水素イオンシステムと呼べるということです。

水素のチカラ


■30歳代以下の1割が罹患

アトピー性皮膚炎は、患者数の多い病気だ。国内では30歳代以下の約1割が罹患(りかん)しているといわれる。

 例えば、厚生労働省の支援を受けた2000~02年実施の疫学調査では、生後4カ月から大学生までの有症率は、8.2~13.2%だった。約4万8000人を対象にした調査だ。また別の調査では20代は10.2%、30代は9%、40代は4.1%、50~60歳代は2.4%という報告もある。

 厚労省の2016年の患者調査によると推計患者数は45万6000人。継続的に医療機関を受診している患者数を推計したものなので、疫学調査の数字より小さく出ているとみられる。年齢別では19歳までが36%、20~44歳が44%と多くを占めるが、45~69歳は16%あり、若年層だけの病気ではない。

 症状の重さは大まかに、約7割が軽症、中等症が2割、重症以上が1割といわれている。「強いかゆみを伴う皮疹」が体表面積の10%以上にあれば重症となり、10%未満なら中等症、面積にかかわらず「軽度の皮疹」のみなら軽症と診断される。

(野村和博)

[日本経済新聞朝刊2017年5月22日付]